概要
二項分布の平均と分散は以下のようになる。
(1)
これらを導くのに、有用なテクニックを使っているのでまとめておく。
直接定義式から導く方法
この方法は、平均、分散の定義式から直接導いていく過程で、意図的に二項展開の形に持ち込んでいく方法。
平均
平均の定義から、以下のように変形していく。
(2)
上式では、各項にが乗じられていることから、以下の流れで変形している。
- のとき1番目の項はゼロとなるので、和の開始値をとする
- 分子にあるを使って、の分母においてとする
- これに整合させるため、分母においてをと変形
- さらに組み合わせの式に整合させるため分子をと変形し、最終的にを引き出している。
- 後に二項定理を使うため、の指数も調整している
ここでとおくと、カウンターの範囲はからとなることから、
(3)
上式では、変形した和の部分が二項展開の形になっていることを利用している。
分散
分散については、が各項に乗じられるが、これをと変形して、階乗のランクを下げるところがミソ。
(4)
上式で、1項目はが乗じられているのでカウンターをから、2項目は同じくからとしている。
ここで1項目についてと置いて、平均の時と同じ考え方で以下のように変形。
(5)
2項目については、とおいて、
(6)
以上を併せて、
(7)
微分による方法
この方法は、の形に着目して、全事象の式を微分する方法。式展開が素直であり、平均の式を微分した結果がそのまま分散の式になってしまうところが美しい。
平均
二項分布の全確率の和は1となる。
(8)
この式の両辺をで微分する。
(9)
両辺にをかける。
(10)
分散
式(10)をもう一度で微分する。
(11)
両辺にをかける。
(12)