ロシアンルーレットの確率

基本

ロシアンルーレットは、賭の順番問題や条件付き確率の問題としてよく見かける。まず、一番基本的なルールで考える。

1人の相手とロシアンルーレットで命をかけることになった。6発入りの拳銃に1発だけ弾を込め、最初にシリンダーを高速で回転させる。シリンダーが止まったところで、相手と交互に引き金を引いていくとして、まず自分から始めるのと相手に譲るのと、どちらが生き残る可能性が高いか。

 

n回目に実弾に当たる確率をP_n \; (n = 1~6)とすると、

1発目で当たる確率は、6つの弾倉のどこかに実弾が入っているので、

(1)    \begin{equation*} P_1 = \frac{1}{6} \end{equation*}

2発目で当たる確率は、1発目で実弾に当たらず、2発目は残り5つの弾倉のどこかに実弾が入っているので、

(2)    \begin{equation*} P_2 = \frac{5}{6} \times \frac{1}{5} = \frac{1}{6} \end{equation*}

以下、6発目まで同じように考えて、

(3)    \begin{eqnarray*} P_3 &=& \frac{5}{6} \times \frac{4}{5} \times \frac{1}{4} = \frac{1}{6} \\ P_4 &=& \frac{5}{6} \times \frac{4}{5} \times \frac{3}{4} \times \frac{1}{3} = \frac{1}{6} \\ P_5 &=& \frac{5}{6} \times \frac{4}{5} \times \frac{3}{4} \times \frac{2}{3} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{6} \\ P_6 &=& \frac{5}{6} \times \frac{4}{5} \times \frac{3}{4} \times \frac{2}{3} \times \frac{1}{2} \times \frac{1}{1}= \frac{1}{6} \end{eqnarray*}

すなわち、通常のロシアンルーレットでは、1~6回目のどこで実弾に当たる確率も等しく1/6で、順番の後先に有利性はない。

毎回シリンダーを回転させる場合

1発だけ弾を込めた拳銃で、2人でロシアンルーレットで命をかける。ただし、それぞれが自分の番になる毎にシリンダーを回転させて、ランダムに止まったところで引き金を引く。自分が最初に打つのと、相手から打たせるのと、どちらを選ぶか。

 

毎回シリンダーを回転させるので、そこまで発砲されていなければ、実弾である確率は毎回1/6。n回目に実弾に当たる確率をp_nとすると、n-1回は当たらないことを考慮して、

(4)    \begin{equation*} p_n = \left( \frac{5}{6} \right) ^{n-1} \times \frac{1}{6} \end{equation*}

まず、この確率はnが大きくなるほどゼロに近づく。たとえば1回めで当たる確率は約16.7%、10回目で当たる確率は約3.2%、20回目で当たる確率は0.5%、40回目だと約0.01%程度となる。

次に、n回目までに当たる確率をP_nとすると、これは各回の確率を累積していくことで求められるので、等比数列の和より、

(5)    \begin{equation*} P_n = \sum_{i=1}^{n} \left( \frac{5}{6} \right) ^{n-1} \times \frac{1}{6} = \frac{1}{6} \frac{1-\left( \dfrac{5}{6} \right)^n}{1 - \dfrac{5}{6}} = 1-\left( \dfrac{5}{6} \right)^n \end{equation*}

この累積確率はn \rightarrow \inftyのとき1に近づくが、10回目で約83.8%、20回目で約97.4%、30回目で約99.6%、40回目で約99.9%となり、100回も打ってその時点で生き延びている確率はほとんどゼロに近い。

次に交互に打っていく場合を考える。

先攻で打つ方になった場合、1回目、3回目・・・と奇数回に打つことになるので、その累積確率をP_{1 \cdot n}とすると、

(6)    \begin{eqnarray*} P_{1\cdot 2n-1} &=& \sum_{k=1}^{n} \left( \frac{5}{6} \right)^{2(k-1)} \times \frac{1}{6} = \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{6} \left( \frac{25}{36} \right)^{k-1} = \frac{1}{6} \cdot \frac{1 - \left( \dfrac{25}{36}\right) ^n }{1 - \dfrac{25}{36}} \\ &=& \frac{6}{11} \left( 1 - \left( \dfrac{25}{36}\right) ^n \right) \end{eqnarray*}

後攻で打つ方になった場合は、2回目、4回目・・・と偶数回に打つことになるので、その累積確率をP_{2 \cdot n}とすると、

(7)    \begin{eqnarray*} P_{2\cdot 2n} &=& \sum_{k=1}^{n} \left( \frac{5}{6} \right)^{2k-1} \times \frac{1}{6} = \sum_{k=1}^{n} \frac{5}{36} \left( \frac{25}{36} \right)^{k-1} = \frac{5}{36} \cdot \frac{1 - \left( \dfrac{25}{36}\right) ^n }{1 - \dfrac{25}{36}} \\ &=& \frac{5}{11} \left( 1 - \left( \dfrac{25}{36}\right) ^n \right) \end{eqnarray*}

同じnに対して常にP_{1 \cdot n} / P_{2 \cdot n} = 1.2となり、先に打つのを選んだほうが実弾に当たる確率は高く、この比率はn \rightarrow \inftyとしたときの結果と同じ。

したがって、「お先にどうぞ」と相手に最初を譲ったほうが、少しでも生き残る確率が高くなる。また、3人以上で順番に打っていく場合は、できるだけ後の順番で打つ方が実弾に当たる確率が低くなる。

条件付きの問題

2発の弾を並べて込める

ロシアンルーレットと少し違うが、条件付きの問題。

筋悪の金貸しから借りたかなりの借金を返せなくなり、命を取られようとしているが、「チャンスをやる」と言われた。彼は6発入りの拳銃の弾倉に2 発の弾を並べて込め、シリンダーを回す。シリンダーがランダムな位置で止まったところで、彼は言う。「今から空に向かって私が1回引き金を引く。その後にお前のこめかみに銃口を当てて打ってもらうが、そのまま打ってもいいし、もう一度シリンダーを回して止まった位置で打ってもいい」

 

1発目が空砲の場合

金貸しが銃を空に向けて引き金を引くと空砲だった。そのまま打つか、シリンダーを回転させるか、どちらを選択すべきか。

 

まず、シリンダーをもう一度回転させてから打つ場合は、6弾倉中2発残っているので、当たる確率は1/3。逆に助かる率は2/3となる。

一方シリンダーを回転させない場合は、手渡された拳銃の弾の状態を、円形に並んだ弾倉を一列で表し、下表のように整理する。ただし、左欄の●は実弾がある場所、○は実弾が入っていない場所で、1番目は金貸しが打ったときの位置、2番目は手渡された時の位置。右欄は2発目が実弾の場合は●、空砲の場合は○とする。

●●○○○○ 対象外
○●●○○○
○○●●○○
○○○●●○
○○○○●●
●○○○○● 対象外

金貸しが打ったときは空砲だったので、1番目が実弾の事象は対象外。このとき、実弾に当たらない確率は3/4となる。

すなわち、もう一度シリンダーを回転させるよりも、そのまま続けて打った方が助かる可能性が高い。

1発目が実弾の場合

もし、金貸しが最初に空へ向けて打ったときに実弾だった場合はどうか?

 

この場合に続けて打つと、1発目が実弾である2ケースに対して、空砲で助かる率は1/2。

シリンダーを回転させてから打つと、実弾は残り1発なので、当たらない確率は5/6で、回転させて打った方が生存確率は高くなる。

条件に応じた選択と確率

以上の結果を整理すると下表の通りとなり、1発目が空砲の場合と実弾の場合で、その後の選択による生存確率の高い方が逆転している。

空砲も実弾もその位置が連続しているため、1発目が空砲の場合は続けて空砲の確率が高く、1発目が実弾の場合は次も実弾の確率が高そうだが、1発目が実弾の場合は弾が1つ消費されるので、その影響で結果が逆転している。

1発目 選択 生存確率
空砲 シリンダー回転 1/3 (0.33)
空砲 続けて打つ 3/4 (0.75)
実弾 シリンダー回転 5/6 (0.83)
実弾 続けて打つ 1/2 (0.50)

実弾2発をランダムに込める

上記の金貸しの問題では実弾2発を並べて込めたが、これをランダムな位置に2発込めた場合はどうなるか。

この場合、2発の実弾の装填状況は下表のようになる。

1発目が→ 空砲 実弾
●●○○○○ 対象外  ●
●○●○○○ 対象外
○●●○○○ 対象外
●○○●○○ 対象外
○●○●○○ 対象外
○○●●○○ 対象外
●○○○●○ 対象外
○●○○●○ 対象外
○○●○●○ 対象外
○○○●●○ 対象外
●○○○○● 対象外
○●○○○● 対象外
○○●○○● 対象外
○○○●○● 対象外
○○○○●● 対象外

1発目が空砲だった場合

シリンダーを回転させた場合の生存確率は、4/6 = 2/3 (0.667)。

続けて打つ場合は、1発目が実弾のケースを除いて2発目が空砲の場合なので、6/10 = 3/5 (0.6)。

1発目が実弾だった場合

シリンダーを回転させた場合の生存確率は、5/6 (0.833)。

続けて打つ場合は、1発目が空砲のケースを除いて2発目が空砲の場合なので、4/5 (0.8)。

1発目が空砲でも実弾でも、シリンダーを回転させた方が生き残る確率が高くなる。

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