R – スクリプトの扱い

スクリプトの記述

  1. コンソールのメニューから、”ファイル”→”新しいスクリプト”でスクリプトエディタ立ち上げ
  2. スクリプトを記述
  3. スクリプトを保存

スクリプトを作業ディレクトリに保存しておくと、コンソールからの実行がしやすい。

作業ディレクトリの確認方法は

スクリプトの実行

エディタからの実行

[CTRL]+R、エディタのカーソル行以降の文が1行ずつ実行される。[CTRL]+Aで全選択して[CTRL]+Rとすると、すべての文が実行される。

コンソールからの実行

スクリプトが作業ディレクトリにある場合は、以下のコマンドで直接実行。

 

確率統計 – 不偏分散の導出

 

標本分散s^2は次式で求められる。このs^2と、母分散\sigma^2の関係を導いてゆく。

(1)    \begin{equation*} s^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} ( x_i - \overline{x} )^2 \end{equation*}

以後、\sumのパラメータを省略する。まず\muを母平均として、\sum (x_i - \overline{x})^2を以下のように変形する。

(2)    \begin{eqnarray*} \sum (x_i - \overline{x})^2 &=& \sum \left( (x_i - \mu) - (\overline{x} - \mu) \right)^2 \\ &=& \sum (x_i - \mu)^2 - 2 \sum (x_i - \mu)(\overline{x} - \mu) + \sum (\overline{x} - \mu)^2 \\ &=& \sum(x_i - \mu)^2 - 2 (\overline{x} - \mu) \sum (x_i - \mu) + n (\overline{x} - \mu)^2 \\ &=& \sum(x_i - \mu)^2 - n (\overline{x} - \mu)^2 \end{eqnarray*}

これより、標本分散s^2の期待値は以下のようになる。

(3)    \begin{eqnarray*} E(s^2) &=& E \left( \frac{1}{n} \left( \sum(x_i - \mu)^2 - n (\overline{x} - \mu)^2 \right) \right) \\ &=& E \left( \frac{1}{n} \sum(x_i - \mu)^2 \right) - E \left( (\overline{x} - \mu)^2 \right) \end{eqnarray*}

1項目については、

(4)    \begin{equation*} E \left( \frac{1}{n} \sum(x_i - \mu)^2 \right) = \frac{1}{n} \sum E(x_i - \mu)^2 = \frac{1}{n} \sum \sigma^2 = \sigma^2 \end{equation*}

また第2項目は標本平均の分散より、

(5)    \begin{equation*} E \left( (\overline{x} - \mu)^2 \right) = \frac{\sigma^2}{n} \end{equation*}

 

これらより、標本分散の期待値は以下のようになる。

(6)    \begin{equation*} E(s^2) = \sigma^2 - \frac{\sigma^2}{n} = \frac{n-1}{n} \sigma^2 \end{equation*}

式(6)より、母分散を得るために以下のように変形。

(7)    \begin{equation*} E \left( \frac{n}{n-1} s^2 \right) = \sigma^2 \end{equation*}

これは、左辺の()の中が母分散\sigma^2の不偏推定量であることを示している。このことから、母分散に対する不偏分散u^2は次式で表される。

(8)    \begin{equation*} u^2 = \frac{n}{n-1} s^2 = \frac{1}{n-1} \sum_{i=1}^{n} ( x_i - \overline{x} )^2 \end{equation*}

不偏分散の分母がn-1となっているのは、母分散ならx_i - \muとなるところが、標本の計算ではx_i - \overline{x}であり、\overline{x}が他の標本から計算されることから、変数の数(自由度)が1少ないことを表している。自由度が少なければ、目指す値を計算するデータが一つ少なくなり、ばらつきはその分大きくなる。

 

 

標本平均の期待値と分散

不偏推定量

標本平均の期待値、分散について考える。イメージとして、母集団からn個の標本値を取り出して期待値\overline{x}を計算し、これを繰り返した場合の\overline{x}の平均と分散を求めることになる。

まず、\overline{x}の期待値については以下のように計算され、標本平均の期待値が母平均の不偏推定量であることがわかる。

(1)    \begin{equation*} E(\overline{x}) = E \left( \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i \right) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} E(x_i) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} \mu = \mu \end{equation*}

次に\overline{x}の分散は以下のように計算される。

(2)    \begin{equation*} V( \overline{x} )= V \left( \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i \right) = \frac{1}{n^2} \sum_{i=1}^{n} V(x_i) = \frac{1}{n^2} \cdot n \sigma^2 = \frac{\sigma^2}{n} \end{equation*}

ここで、xiはそれぞれ独立に選ばれることから、V(x1, …, xn)は線形に分解できる。

標本平均\overline{x}の分散がXの母分散をnで割った値となっているのは、標本平均を計算する項数が多いほど期待値に対する誤差が小さくなることを示唆している。

式(2)は、次のように偏差の自乗和の期待値でも表現できる。

(3)    \begin{equation*} V( \overline{x} ) = E\left( (\overline{x} - \mu )^2 \right) = \frac{\sigma^2}{n} \end{equation*}

確率分布

標本X1, …, Xnの母集団が正規分布N(μ, σ2)に従うとき、標本の和X1 + ··· + Xnは正規分布N(, 2)に従い標本平均\overline{X}はN(μ, σ2/n)に従うことが知られている。

また母集団の分布が正規分布でないとしても、中心極限定理により、標本の数(この場合は平均を取り出す回数)を多くすれば、その平均は正規分布に従う。

 

確率統計 – 分散と共分散

分散の定義

標本分散・母分散は、標本値や確率変数の平均からの偏差の自乗平均で定義される。

(1)    \begin{equation*} s^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (x_i - \overline{x})^2 \end{equation*}

(2)    \begin{equation*} \sigma^2 = \sum_{i=1}^{n} (x_i - \mu) {\rm Pr}(X = x_i) \end{equation*}

(3)    \begin{equation*} \sigma^2 = \int_{-\infty}^{\infty} (x - \mu) f(x) dx \end{equation*}

分散の定義の一般形は以下の通りで、母集団の確率分布によらない。

(4)    \begin{equation*} V(X) = E((X - E(X))^2) = E(X^2) - (E(X))^2 \end{equation*}

証明

(5)    \begin{eqnarray*} E((X - E(X))^2) &=& E(X^2 - 2X E(X) + (E(X))^2) \\ &=& E(X^2) - 2(E(X))^2 + (E(X))^2 \\ &=& E(X^2) - (E(X))^2 \end{eqnarray*}

分散の性質

分散には以下の性質がある。

(6)    \begin{equation*} V(X + t) = V(X) \end{equation*}

(7)    \begin{equation*} V(aX) = a^2 V(X) \end{equation*}

(8)    \begin{equation*} V(X + Y) = V(X) + V(Y) + 2{\rm Cov}(X, Y) \end{equation*}

定数加算

標本値、確率変数に定数を加えても、分散の値は変わらない。これは、分散が各標本値・確率変数の平均からの偏差の平均であり、定数のバイアスはキャンセルアウトされることから明らかでもある。

     \begin{equation*} V(X + t) = V(X) \end{equation*}

証明

(9)    \begin{eqnarray*} V(X + t) &=& E((X + t)^2) - (E(x + t))^2 \\ &=& E(X^2 + 2Xt + t^2) - (E(X)) + t)^2 \\ &=& E(X^2) + 2t E(X) + t^2 - (E(X))^2 - 2t E(X) - t^2 \\ &=& E(X^2) - (E(X))^2 \\ &=& V(X) \end{eqnarray*}

定数倍

標本値、確率変数を定数倍した場合、分散の値は定数の自乗倍になる。これは、分散の定義の形からも明らか。

     \begin{equation*} V(aX) = a^2 V(X) \end{equation*}

証明

(10)    \begin{eqnarray*} V(aX) &=& E((aX)^2) - (E(ax))^2 \\ &=& a^2 (E(X^2) - (E(X))^2) \\ &=& a^2 V(X) \end{eqnarray*}

和の分散

2変数の場合

二つの標本値の組や確率変数を加えた場合の分散は、それぞれの分散の和に双方の共分散を加えた値になる。平均のような線形性がなく、2変数の和の2乗を展開した形と類似している。

     \begin{equation*} V(X + Y) = V(X) + V(Y) + 2{\rm Cov}(X, Y) \end{equation*}

証明

(11)    \begin{eqnarray*} V(X + Y) &=& E((X + Y)^2) - (E(X + Y))^2 \\ &=& E(X^2 + Y^2 + 2XY) - (E(X) + E(Y))^2 \\ &=& E_{XX} + E_{YY} + 2E_{XY} - {E_X}^2 - {E_Y}^2 - 2E_X E_Y \\ &=& E_{XX} - {E_X}^2 + E_{YY} - {E_Y}^2 +2(E_{XY} - E_X E_Y) \\ &=& V(X) + V(Y) + 2{\rm Cov}(X, Y) \end{eqnarray*}

上式でE(X) = E_X, E(X^2) = E_{XX}などと置き換えている。

3変数の場合

3つ確率変数の和の場合は以下の通りで、3つの変数の和の2乗を展開した形と類似している。

(12)    \begin{align*} V(X+Y+Z) = &V_{XX} + V_{YY} + V_{ZZ} \\ &+ 2\rm{Cov}(X, Y) + 2\rm{Cov}(Y, Z) + 2\rm{Cov}(Z, X) \end{align*}

証明

(13)    \begin{align*} &V(X+Y+Z) \\ &= E((X+Y+Z)^2) - E(X+Y+Z)^2 \\ &= E(X^2 + Y^2 + Z^2 + 2XY + 2YZ + 2ZX)\\ &\quad - ( E(X) + E(Y) + E(Z) )^2 \\ &= E_{XX} + E_{YY} + E_{ZZ} + 2E_{XY} + 2E_{YZ} + 2E_{ZX} \\ &\quad - {E_X}^2 + {E_Y}^2 + {E_Y}^2 - 2E_X E_Y - 2E_Y E_Z - 2E_Z E_X \\ &= V_{XX} + V_{YY} + V_{ZZ} + 2\rm{Cov}(X, Y) + 2\rm{Cov}(Y, Z) + 2\rm{Cov}(Z, X) \end{align*}

和の分散~独立な場合

確率変数XYが独立なとき、次項で示すように共分散がゼロとなり、以下が成り立つ。

(14)    \begin{equation*} V(X + Y) = V(X) + V(Y) \end{equation*}

共分散の定義

2つの標本値、確率変数の共分散は以下で定義される。

(15)    \begin{equation*} {\rm Cov}(X, Y) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (x_i - \overline{x})(y_i - \overline{y}) \end{equation*}

これは以下のようにも表現できる。

(16)    \begin{equation*} {\rm Cov}(X, Y) = E((X-E(X))(Y - E(Y)) = E(XY) - E(X) E(Y) \end{equation*}

証明

(17)    \begin{eqnarray*} E((X-E(X))(Y - E(Y)) &=& E(XY -X E_Y - Y E_X + E_X E_Y) \\ &=& E_{XY} - E_X E_Y - E_X E_Y + E_X E_Y \\ &=& E_{XY} - E_X E_Y \end{eqnarray*}

共分散は、2つの標本値、確率変数に正の相関が強い場合に生となり、負の相関が強い場合に負となる。また、相関が弱い場合にゼロに近くなる。

共分散の性質

定数加算

共分散の変数に定数を加えても、加える前の共分散と同じ値になる。定数をいずれの変数に加えても同じ。

(18)    \begin{eqnarray*} {\rm Cov}(X + t, Y) &=& E((X + t)Y) - E(X + t) E(Y) \\ &=& E(XY + tY) - E(X)E(Y) - tE(Y) \\ &=& E(XY) + tE(Y) - E(X) E(Y) - tE(Y) \\ &=& {\rm Cov}(X, Y) \end{eqnarray*}

定数倍

共分散の変数を定数倍すると、もとの共分散の定数倍になる。両方の変数を定数倍すると、もとの共分散に双方の定数の積を乗じた値になる。

(19)    \begin{eqnarray*} {\rm Cov}(aX, Y) &=& E(aXY) - E(aX) E(Y) \\ &=& a(E(XY) - E(X) E(Y)) \\ &=& a{\rm Cov}(X, Y) \end{eqnarray*}

和の共分散

標本値、確率変数の和は、加える前の個々の共分散の和になる。すなわち、共分散においては分配法則が成り立つ。

(20)    \begin{equation*} {\rm Cov}(X + Z, Y) = {\rm Cov}(X, Y) + {\rm Cov}(Z, Y) \end{equation*}

証明

(21)    \begin{eqnarray*} {\rm Cov}(X + Z, Y) &=& E((X + Z)Y) - E(X + Z) E(Y) \\ &=& E(XY + ZY) - (E(X) + E(Z)) E(Y) \\ &=& E(XY) - E(X) E(Y) + E(ZY) - E(Z) E(Y) \\ &=& {\rm Cov}(X, Y) + {\rm Cov}(Z, Y) \end{eqnarray*}

独立事象の共分散

2つの確率変数の事象が独立な場合、共分散はゼロとなる。

証明:離散型確率変数

XYが独立ならば、その同時生起確率はそれぞれの確率の積となるので。

(22)    \begin{equation*} {\rm Pr}(X = x_i, Y = y_j) = {\rm Pr}(X = x_i) {\rm Pr}(Y = y_j) = {\rm Pr}(x_i) {\rm Pr}(y_j) \end{equation*}

これより

(23)    \begin{eqnarray*} E(XY) &=& \sum_{i=1}^{m} \sum_{j=1}^{n} x_i y_j  {\rm Pr}(x_i) {\rm Pr}(y_j) \\ &=& \sum_{i=1}^{m} \left(x_i {\rm Pr}(x_i) \sum_{j=1}^{n} y_j {\rm Pr}(y_j) \right) \\ &=& \sum_{i=1}^{m} x_i {\rm Pr}(x_i) E(Y) \\ &=& E(X) E(Y) \end{eqnarray*}

これを定義式に適用して{\rm Cov}(X, Y) = 0が確認できる。

証明:連続型確率変数

XYが独立なとき、その確率密度はそれぞれの確率密度の積となる。

(24)    \begin{equation*} f(x, y) = g(x)h(y) \end{equation*}

これより

(25)    \begin{eqnarray*} E(XY) &=& \int_{- \infty}^{\infty} \int_{- \infty}^{\infty} x y g(x) h(y) dx dy \\ &=& \int_{- \infty}^{\infty} \left( x g(x) \int_{- \infty}^{\infty} y h(y) dy \right) dx \\ &=& \int_{- \infty}^{\infty} \left( x g(x) E(Y) \right) dx \\ &=& E(X) E(Y) \end{eqnarray*}

これを定義式に適用して{\rm Cov}(X, Y) = 0が確認できる。

線形関係の場合の共分散

XとYが完全な線形関係にある場合の共分散は、XまたはY(いずれでもよい)の分散の定数倍になる。

証明

(26)    \begin{align*} {\rn Cov}(X, Y) &= E(XY) - E(X) E(Y) \\ &= E(X (aX + b)) - E(X)\left( E(aX + b) \right) \\ &= E(aX^2 + bX) - E(X) \left(a E(X) + b \right) \\ &= aE(X^2) + b E(X) - aE(X)^2 - b E(X) \\ &= aV(X) = \frac{V(Y)}{a} \end{align*}

 

確率統計 – 平均・期待値

定義

平均の定義には標本平均と確率変数の平均があって、それぞれ定義が異なるので、ここで整理する。

標本平均に対しては算術平均、幾何平均、調和平均などの定義があるが、ここでは算術平均を対象とする。

標本平均

標本平均は、標本データの値を足し合わせてその個数で割った値。

標本の値がX : \{x_1, x_2, \cdots , x_n\}のとき、標本平均\overline{x}は標本値の算術平均で定義される。

(1)    \begin{equation*} \overline{x} = E(X) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i \end{equation*}

確率変数の平均

確率変数の平均は、離散型の場合と連続型の場合それぞれで定義される。

離散型の確率変数X\{x_1, x_2, \cdots , x_n\}の値を取り、それぞれの値をとる確率を{\rm Pr}(X = x_i)と表すと、Xの母平均\muは確率変数とその確率変数の発生確率の積の総和で定義される。

(2)    \begin{equation*} \mu = E(X) = \sum_{i=1}^{n} x_i {\rm Pr}(X = x_i) \end{equation*}

連続型の確率変数の平均は、確率密度関数をf(x)とすると、Xの母平均\muは、確率変数とその値に対する確率密度の積の全定義域における積分で定義される。

(3)    \begin{equation*} \mu = E(X) = \int_{- \infty}^{\infty} x f(x) dx \end{equation*}

平均(期待値)の性質

平均(期待値)には以下の性質がある。これらは、母集団の確率分布に関係なく常に成り立つ。

(4)    \begin{equation*} E(X+t) =E(X)+t \end{equation*}

(5)    \begin{equation*} E(aX) =a E(X) \end{equation*}

(6)    \begin{equation*} E(X+Y) =E(X)+E(Y) \end{equation*}

定数加算

標本値、確率変数に定数を加えた場合の平均は、元の平均に定数を加えた値に等しい。

     \begin{equation*} E(X+t) =E(X)+t \end{equation*}

証明:標本平均

(7)    \begin{equation*} E(X+t) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (x_i + t) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i + \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} t = E(X) + t \end{equation*}

証明:離散型確率変数

(8)    \begin{eqnarray*} E(X + t) &=& \sum_{i=1}^{n} (x_i + t){\rm Pr}(X = x_i) \\ &=& \sum_{i=1}^{n} x_i {\rm Pr}(X = x_i) + t  \sum_{i=1}^{n} {\rm Pr}(X = x_i) \\ &=& E(X) + t \end{eqnarray*}

証明:連続型確率変数

(9)    \begin{eqnarray*} E(X + t) &=& \int_{- \infty}^{\infty} (x + t) f(x) dx \\ &=& \int_{- \infty}^{\infty} x f(x) dx + t \int_{- \infty}^{\infty} f(x) dx \\ &=& E(X) + t \end{eqnarray*}

定数倍

標本値、確率変数を定数倍した場合の平均は、元の平均の定数倍に等しい。

     \begin{equation*} E(aX) =aE(X) \end{equation*}

証明:標本平均

(10)    \begin{equation*} E(aX) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} ax_i = a \cdot \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i = a E(X) \end{equation*}

証明:離散型確率変数

(11)    \begin{equation*} E(aX) &=& \sum_{i=1}^{n} a x_i {\rm Pr}(X = x_i) = a  \sum_{i=1}^{n} x_i {\rm Pr}(X = x_i) = a E(X) \end{equation*}

証明:連続型確率変数

(12)    \begin{equation*} E(aX) &=& \int_{- \infty}^{\infty} ax f(x) dx = a \int_{- \infty}^{\infty} x f(x) dx = a E(X) \end{equation*}

和の平均

複数の標本値(データセット)、確率変数を加えた場合の平均は、それぞれの平均の和に等しい

     \begin{equation*} E(X + Y) = E(X) + E(Y) \end{equation*}

証明:標本平均

(13)    \begin{equation*} E(X+Y) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (x_i + y_i) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i +  \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} y_i = E(X) + E(Y) \end{equation*}

証明:離散型確率変数

 

確率変数Xx_i (i=1~m)Yy_j (j=1~n)であり、XYはそれぞれの確率分布に従うとする。また、XYの同時生起確率を{\rm Pr}(x_i,y_j)と表す。

このとき、確率変数X+Yの平均は以下のように計算される。

(14)    \begin{eqnarray*} E(X+Y) &=& \sum_{i=1}^{m} \sum_{j=1}^{n} (x_i + y_j) {\rm Pr}(x_i,y_j) \\ &=& \sum_{i=1}^{m} \sum_{j=1}^{n} x_i {\rm Pr}(x_i,y_j) +  \sum_{i=1}^{m} \sum_{j=1}^{n} y_j {\rm Pr}(x_i,y_j) \end{eqnarray*}

上式の第1項についてみると、x_iの値に対してすべてのy_jのとりうる値を考慮していることから、x_iとそれに対する生起確率{\rm Pr}(X = x_i)=Pr(x_i)となり、第1項はXの平均となる。

(15)    \begin{equation*} \sum_{i=1}^{m} \sum_{j=1}^{n} x_i {\rm Pr}(x_i,y_j) = \sum_{i=1}^{m} x_i  {\rm Pr}(x_i) \end{equation*}

第2項も同様にYの平均なので、以下が成り立つ。

     \begin{equation*} E(X + Y) = E(X) + E(Y) \end{equation*}

証明:連続型確率変数

確率変数X:x , Y:yに対する同時生起確率密度をf(x, y)とすると、

(16)    \begin{eqnarray*} E(X,Y) &=& \int_{- \infty}^{\infty} \int_{- \infty}^{\infty} (x + y) f(x, y) dy dx \\ &=& \int_{- \infty}^{\infty} \int_{- \infty}^{\infty} x f(x, y) dydx + \int_{- \infty}^{\infty} \int_{- \infty}^{\infty} y f(x, y) dxdy \end{eqnarray*}

離散型と同様の考え方により、上式の第1項、第2項はそれぞれX, Yの平均となり、次式が成り立つ。

     \begin{equation*} E(X + Y) = E(X) + E(Y) \end{equation*}

 

QuickLaTeX – 数式の番号について

概要

QuickLaTeXでディスプレイ数式を書くとき、通常のequationやeqnarrayを使うと自動的に番号が付けられるが、番号をつけない方法とまとめて整理した。

ディスプレイ数式

番号付き

equationブロックにする。

(1)    \begin{equation*} y = a x + b \end{equation*}

番号なし

equation*を使う。

     \begin{equation*} y = a x + b \end{equation*}

連立方程式

番号付き

eqnarrayブロックにする。

QuickLaTeXの場合、式番号は連立方程式群に一つの番号がつく。個別の式に番号をつけるためのnumcases、subnumcasesは機能しない。

等号を揃えるには、等号の前後を&で挟む。

(2)    \begin{eqnarray*} x &=& y + z \\ u + v &=& w \end{eqnarray*}

番号なし

eqnarray*を使う。

     \begin{eqnarray*} x &=& y + z \\ u + v &=& w \end{eqnarray*}

大穴牟遅神

古事記~国生み~大穴牟遅神

八上比売に拒絶された八十神は、大穴牟遅神(大国主神)を二度にわたって殺そうとするが、母の刺国若比売らによって生き返る。紀伊国まで逃げた大穴牟遅神を更に八十神が負い、そこから大穴牟遅は須佐之男命がいる根之堅州国へ向かう。

八上比売に拒絶された八十神は、大穴牟遅神を殺そうとする。伯耆国の手間の山の麓に着いたとき、「この山にいる赤い猪を追い出すから、麓で待って猪を捕えろ」と言い、大きな岩を比で真っ赤に焼いて山の上から転がし落した。大穴牟遅はその岩を受け止め、焼かれて死んでしまう。

大穴牟遅の母の刺国若比売は悲しんで、高天原の神産巣日命にお願いすると、神産巣日命は刮貝比売(きさがいひめ)と蛤貝比売(うむがいひめ)を遣わす。刮貝比売が刮げ集め、蛤貝比売が持ち承けて母(おも)の乳汁(ちしる)を塗ると大穴牟遅神は生き返る。

八十神は再び謀って、大穴牟遅神を山へ連れていく。大木を切って楔を打ち込み、その中に大穴牟遅を入れた後に楔を外し、大穴牟遅神は死んでしまう。

母の刺国若比売は大穴牟遅神を見つけて生き返らせ、彼を紀伊国の大屋毗古神のところへ遣わす。

八十神が大穴牟遅神を紀伊国まで追い、矢を弓につがえようとしたとき、大屋毗古神は「この世にいては貴方の命は危ない。須佐之男命のいる根之堅州国へ行きなさい。須佐之男命が謀を授けてくれよう」と送り出す。

 

因幡の素兎

古事記~国生み~因幡の素兎

大国主神とその何人もの兄弟(八十神)は、稲羽の国の八上比売と結婚したいと思い、大国主神に荷を負わせて稲羽に向かう。その途中、和爾に皮をはがれた素兎に出会うが、八十神は素兎にうそを教えて素兎の傷はひどくなる。後から来た大国主神が素兎の皮を元に戻してやり、素兎は大国主神と八上比売の結婚を予言する。

大国主神には多くの兄弟(八十神)がいたが、彼らは大国主神を疎んでいた。八十神は、稲羽の国の八上比売と結婚したいと思い稲羽に向かうが、その際大穴牟遅神(大国主神)に荷を負わせて連れていく。

兄弟が気多の岬に着いたとき、赤裸の兎がいたので、海水を浴び、強い風にあたって、高い山の上で寝ているとよいと言う。

兎が言われたとおりにすると、身体中の皮がひび割れて痛くなり、泣いているところへ大穴牟遅神が後からやってきて泣いているわけを尋ねる。

兎は元は淤岐嶋に住んでいたが、本州に渡ろうと思い、次のように和邇を騙したという。

  • 俺とお前でどちらの種族が多いか比べたい
  • お前は仲間のすべてを連れてきて、隠岐の島から気多の岬まで一列に並ばせろ
  • 俺はお前たちの背中を踏んで走りながら、数を数えよう

一列に並んだ鮫を数え、気多の地に着く間際に、「お前は私に騙された」と言ってしまい、一番端にいた和邇が兎の皮をはいでしまった。その後泣き悲しんでいたところへ先の兄弟の話となり、一部始終を伝える。

大穴牟遅神は兎に次のように教える。

  • 河口に行って、河の水で体を洗う
  • 河口の蒲の花粉を敷き、その上に寝転がる

兎がその通りにし、身体が元通りになる。これが因幡の素兎で、いまは兎神と呼ばれている。

兎は大穴牟遅神に「あなたの兄弟は八上比売を得ることはできない。あなたがきっと八上比売を得るだろう。」という。

その通りに、八上比売は八十神に対し「私はあなた方のものにはならない」といい、大穴牟遅神に「袋を負ったあなたのものにしてください」と言う。

 

 

八雲立つ

古事記~国生み~八雲立つ

八俣の大蛇を退治した須佐之男命は、出雲の国に須賀の宮を建て「八雲立つ」の歌を詠む。須佐之男命と櫛名田比売の間に生まれた神の子孫が大国主神であることが記される。

八俣の大蛇を退治した須佐之男命は、出雲の国に宮殿を建てる場所を探していたときある場所に来て「私はここに来て心がすがすがしくなった」と言ったので、その場所を須賀と言う。

須佐之男命が須賀の宮を建てたとき、その地から雲が湧き上がってくるのを見て歌を詠んだ。

八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を
“雲が幾重にも立ち上る。その雲が多くの垣根のように宮殿を取り巻いている。その宮殿に私は妻を籠もらせる。雲が垣根をつくっている。ああ雲が垣根をつくっている。”

須佐之男命は足名椎を呼び、宮殿を守る長となるよう命じ、稲田宮主須賀之八耳神(いなだのみやぬしすがのやつみみのかみ)と名を与えた。

須佐之男命は、その後三人の神々をもうける。

  • 櫛名田比売との間に、八島士奴美神(やしまじぬみのかみ)
  • 大山津見神(おおやまつみのかみ~足名椎の親)の娘の神大市比売(かむおおいちひめ)との間に大年神(おおとしのかみ)と宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)

長男の八島士奴美神が、大山津見神の娘の木花知流比売(このはなのちるひめ)との間に設けた子が布波能母遅久奴須奴神(ふわのもじくぬすぬのかみ)。

布波能母遅久奴須奴神が淤迦美神(おかみのかみ)の娘の日河比売(ひかわひめ)との間にもうけた子が深淵之水夜礼花神(ふかぶちのみずやれはなのかみ)。

深淵之水夜礼花神が天之都度閇知泥神(あめのつどへちねのかみ)との間にもうけた子が淤美豆奴神(おみずぬのかみ)。

淤美豆奴神が布怒豆怒神(ふぬずぬのかみ)の娘の布帝耳神(ふてみみのかみ)との間にもうけた子が天之冬衣神(あめのふゆきぬのかみ)。

天の冬衣神が刺国大神(さしくにおおのかみ)の娘の刺国若比売との間にもうけた子が大国主神である。

大国主神は五つの名を持っている。

  • 大穴牟遅神(おおなむちのかみ)
  • 葦原色許男神(あしはらしこおのかみ)
  • 八千矛神(やちほこのかみ)
  • 宇都志国玉神(うつしくにたまのかみ)

 kojiki-tree-okuninushi

八俣の大蛇

古事記~国生み~八俣の大蛇

追放された須佐之男命が出雲の国で足名椎・手名椎・櫛名田比売に会い、八俣の大蛇を退治して草薙の太刀を手に入れる。

追放された須佐之男命が、出雲の国の斐伊川の上流にある鳥髪に降ったとき、箸が流れてきた。上流に人が住んでいると思った須佐之男命が川を上っていったところ、老人と老女が少女を間において泣いていた。

須佐之男命が「お前たちは誰か」と尋ねると、老人が「私は国津神の大山津見神(おおやまつみのかみ)の子で足名椎(あしなづち)、妻は手名椎(てなづち)といい、娘は櫛名田比売といいます」と答えた。

須佐之男命が「お前たちはどうして泣いているのか」と尋ねると、老人は、「私には以前、八人の娘がいたのですが、高志(こし)の八俣の大蛇が毎年やってきて食べてしまいました。また八俣の大蛇がやってくるときになったので泣いているのです」と答えた。

須佐之男命が八俣の大蛇がどのような形か尋ねると、老人は答えて

  • 目は赤いほおずきのよう
  • 一つの胴に八つの頭と八つの尾がある
  • その身には苔と檜と杉が生えている
  • 長さは八つの谷、八つの峰に渡るほど
  • 腹はいつも血でただれている

須佐之男命が「娘を私にくれないか」と尋ねると、老人は「あなたの名前をまだ伺っていない」と答えるので、須佐之男命は「私は天照大御神の弟で、いま高天原から降(くだ)ってきたのだ」と答える。足名椎と手名椎は、「畏れ多いこと、娘を差し上げましょう」と言う。

須佐之男命は櫛名田比売を神聖な櫛に変え、自らの鬟に刺し、足名椎・手名椎に「何度も醸造した強い酒をつくり、垣根を張り巡らして八つの門を設け、その門ごとに酒を入れる船を置いて、その船ごとによく醸造した酒を満たして待つように」と命じる。

足名椎・手名椎がそれに従って待っていると、八俣の大蛇がやってきて、酒を飲み干し酔っぱらって寝てしまう。そこで須佐之男命は十握の剣で大蛇をばらばらに切り、斐伊川はその血で真っ赤になった。

須佐之男命が大蛇の中の尾を切ったとき、剣の刃が折れたので、大蛇の尾を割ってみると、都牟刈(つむがり)の太刀~偉大な力を持った太刀をみつける。

須佐之男命がその太刀を天照大神に献上されたが、これが草薙の太刀である。